●料理を褒めてくれないという不満
先日、俺が親しくしている或る奥様から、
「うちの夫は私の料理に対して何も言ってくれない」
「美味しいのか、不味いのか、それを言ってくれるだけでもいい」
「なんで何も言わないんでしょうか?」
という愚痴と質問を受けてしまった。
その奥様からは時折料理を頂き、美味しく食べさせて貰っており、他の人から貰った料理の中で一番美味いといってもいい。それなのにその旦那はその料理に何も言わないという。これは普通の悩みではなく、贅沢な悩みであると言っていい。
その旦那とみんなで会食する機会があり、普段なら普通に食べるのに、奥様から質問を受けていたから、注視して見るようにした。すると確かに何を食べてもなんの反応もしないのであって、それよりも会話をする事に夢中だった。
俺は何を食べても美味い不味いを言うのだが、男性たちの中には料理に対して何も言わない人たちがいるという事もまた事実である。恐らく幼少の頃に母子の会話が不足して、料理をあれこれ言う事をしなかったのであろう。ただ単に作った物を食べさせれば、料理に感想を言う事はしなjく成るのは当たり前だ。
この問題を安易に解決するのは、旦那に、
「少しは奥さんの作った料理を褒めてあげれば」
とアドバイスすればいい事であろう。しかしなぜだかそう言えなかった。この問題には違う問題が潜んでいるのではないかと思ってしまったのである。
●感謝の念を込める
俺が考えたのは、
「その奥様には邪念がある」
という事だった。邪念といっても、普通の邪念ではなく、女性が結婚してしまうと持つ可能性が高い邪念である。それは、
「自分の夫は自分の思い通りに動いて欲しい」
という邪念であり、この邪念があるからこそ、夫は妻が如何なる料理を作っても、なんの反応もして来ないという現象が起こってしまうのだ。
人間は自由に動きたいから、誰から統制を受ければ、それに反発してしまう。しかも夫婦のように家の中には大人が2人しかいない場合、妻がそんな想いを持とうものなら、夫は激しく抵抗する事に成る。
「料理の感想を述べて欲しい」という事も、「自分が料理を作った以上、夫はちゃんと褒めるべきである」という感情があるからこそ、これは邪念になってしまうのである。だからただ単に感想を述べればいいという事では、この問題は解決しない。
そこで俺が辿り着いた結論は、
「感謝の念を込めて料理を作るべし」
というものだった。自分が今の旦那と結婚して、今ここに生きていてくれる事を感謝する。この感謝が出来た時、旦那の方に何かしらの変化が起こることであろう。
女性であるなら、愛情を込めて料理を作る事は簡単に出来る。しかし感謝の念を込めて料理を作るというのはそう簡単には出来ない。感謝は愛よりもハイレベルの物だから、その人のレベルが低ければ、絶対に感謝などしないものだ。
●食材の質と料理の腕
この問題は飽くまでも綾里が巧い既婚女性の悩みなのであって、料理が下手糞な既婚女性が、
「料理に感謝の念を込めればいいんだ」
と思っていい訳ではない。料理が下手であるなら、まずは料理を上達させていくべきであろう。
料理という物は食材で決まる要素が強いので、出来るだけいい食材を買うようにする。特に調味料には気を付けるべきであって、いい調味料を使わないと、味付けで失敗することになる。それと調理器具もいい物を使った方がよく、粗悪な調理器具では出来る料理も限られてくる。
料理の上でやはり自分で勉強していかないと上達していかない。お料理番組を見るのもいいし、料理の本を買って読むのもいいし、お料理教室に通うのもいい。少しはそういう事にお金をかけないと、なかなか上達しない。
既婚女性が思わずやってしまいがちなのが、相手の好みなど考えず、自分の好きな料理を出してしまう事だ。それと自分が一人になった時、インスタント食品で済ましたりして、味覚を自らの手を破壊してしまう事だ。
この奥様は料理の腕が良いにも拘らず、深刻な問題を抱えているのであって、料理が下手だから夫が何も言ってこないという問題ではない。料理が下手な既婚女性は感謝の念云々ではなく、まずは自分の料理の腕を磨かなければ成らない。