●チャンネルの主導権
池田理代子の『ベルサイユのばら』によって少女漫画黄金時代は幕を開けるのだが、この漫画が連載されていた時期は、俺はまだ赤ちゃんなので、全くの無関係。姉も年齢的に少し早すぎたので、アニメで『ベルサイユのばら』を見た程度。しかし『キャンディ・キャンディ』になると、姉はまさにドンピシャで当たり、思いっきり嵌ってしまった。
子供の頃の写真を見ると、姉は実に変な格好をしているのだが、これはキャンディ・キャンデイの服装を真似て母親に作らし、それを着ていたからである。当然の愛読書は『キャンディキャンディ』で、雑誌は『キャンディ・キャンディ・』が連載されていた『なかよし』(講談社)ということになる。
子供たちでテレビを見る時、姉は第一子の特権を利用して、姉がチャンネルの主導権を独占。見るのはいつも少女漫画のアニメ。このため俺は『機動戦士ガンダム』はかなり遅れて見てしまい、ガンプラのブームが正にピークに成ってからガンプラを買う羽目になってしまった。
姉以上に恐ろしいのが父親で、父親がいる時はプロ野球中継を見る事に成るから、これが実に嫌であった。というのは、アニメは1回ごとに話がかなり進むので、1回飛ばされると、話がよく解らなくなってしまうからだ。それで野球は或る時期から嫌いになってしまって、それが今でも続いている。
●引っ越し
この姉に変化が起こったのは、姉が中学生の時に我が家が引越しをした時である。この引越しによって姉には1室が与えられたのだが、それでそなりに整理整頓する事になったし、女の子らしく部屋を彩った。するとどうであろう。姉の本棚から講談社の雑誌や本が消えてしまったのである。
その代わり出て来たのが白泉社の『花とゆめ』であり、中学高校とこの『花とゆめ』が愛読誌となった。なんで『花とゆめ』が選ばれたのかというと、『なかよし』よりも遥かにセンスが良かったからだ。特に白泉社から出される単行本の表紙はセンスが実に良く、一目見ただけで「これは白泉社の物である」というのが解った。
今から考えてみると、姉は集英社が出していた『週刊マーガレット』には全く嵌らなかったという事に成る。今回、俺が『ベルサイユのばら』に嵌ったので、当時の『週刊マーガレット』を探し出して読んだ所、ダサい事、ダサい事、『花とゆめ』に馴れてしまった俺としては、とてもではないが、読むに堪えなかった。
姉は集英社の物を完全にパスしたのではなく、中学生からは集英社のコバルト文庫を大量に買い込んで読むようになった。集英社が出している少女漫画はダメだけど、少女小説ならいいという事であり、少女漫画を大量に読んでいたくせに、なんで集英社が出していた物を好まなかったのか、実に不思議である。
●物語重視の集英社、キャラ重視の講談社
少女漫画黄金時代では、池田理代子の『ベルサイユのばら』(集英社)がトップに君臨し、そのほかに山本錫美香の『エースをねらえ』(集英社)、水木杏子の『キャンディ・キャンディ』(講談社)、美内すずえの『ガラスの仮面』(白泉社)が続く。『ガラスの仮面』は『花とゆめ』に連載されていたので、それで『花とゆめ』を愛読していた訳である。
少女漫画黄金時代は集英社と講談社の争いなのであって、そこに後から白泉社が入ってきたに過ぎない。白泉社は集英社の傘下にあるので、この戦いは集英社の方が圧倒的に有利である。社風の違いが漫画の違いを生み出し、漫画の違いが読者たちを分けていった。
俺が思うのに、
「集英社の方は物語重視なんだろうな」
という事であり、
「講談社の方はキャラ重視なんだろうな」
という事である。『キャンディ・キャンディ』を見ても、内容がイマイチよく解らなかったが、『ベルサイユのばら』や『エースをねらえ』では男の俺が見ても、内容が実に良く解った。
白泉社は集英社で培った物を更に発展させたから、それで姉は講談社の方から白泉社の方に切り替えたという訳なのだろう。物語重視ではそれに耐えうるキャラを作らないと、ダメに成ってしまうから、集英社の方では大ヒットする少女漫画がある分、詰まらないな~と思ってしまう少女漫画も多々ある事に成る。『ガラスの仮面』が未だに続いているのは、物語もいいし、キャラたちもいいからであろう。
●集英社は講談社を殲滅できなかった
小学館は『小学1年生』などの少年向け雑誌を出す事で、講談社の 『少年講談』を廃刊に追い込んでいった。集英社も『週刊マーガレット』が大ブレイクしていた時に、講談社の『少女フレンド』をすぐさま廃刊に追い込む事は出来なかった。『少女フレンド』は競争に耐え抜き、1996年になってやっと廃刊した。講談社の方にはまだまだ『なかよし』があるので、集英社は講談社を殲滅する事が出来なかったという事に成る。
俺は今回、『ベルサイユのばら』に嵌った事で、なんで殲滅する事が出来なかったのか、その理由が解ってしまった。それは、
「集英社の編集部が余りにも乱雑である」
という事なのである。集英社の編集部は、まるで出版社の編集部の絵に描いたように、机の上に大量の書類が山のようになって積み上げられている。こういう編集部が作る雑誌だと、どうしてもパワー不足に陥ってしまうのである。
我が家では部屋の中を汚くしていると、母親が掃除をしにくるので、それで出来るだけ整理整頓を心がけるようになった。こういう家だと、汚い所で作られた雑誌というのは、どうも合わないのである。白泉社の編集部がどうかは知らないのだが、恐らく集英社の編集部よりはマシなのであろう。
因みにうちの姉が集英社のコバルト文庫に嵌っていた時、姉は家事手伝いを一切しなかrた。このため家事手伝いは全て俺がやる羽目になった。集英社の出している出版物には何かおかしな部分があると見た方がいい。集英社の社員たちの独身率は他の出版社に比べて相当に高いのではないかと思う。
集英社が少女漫画の分野で講談社を殲滅出来なかった事は、デフレ不況になると。少女漫画の戦国時代というか、全体を牽引できるだけの実力を持った女性漫画家がいなくなり、小粒の女性漫画家たちが活躍して、そこそこの成功で満足するようにしなってしまった。やはり勢力地図を塗り替える時は思いっきりやるべきであって、攻めあぐねてしまうような事をしてはならないのである。
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