●起業家の本は絶対に読むべし
ビジネスをやっているのなら、絶対に起業家が書いた本を買って読んでおいた方がいい。起業家の本は本当に価値があるのだ。読めば自分のビジネスで役立つし、私生活をどうするかでも役立つし、実際に自分が会社を作る時にも役立つのだ。
会社を作ってみないと、ビジネスのことは良く解らないものである。経済学者が幾ら経済のことを説明しても、経済のことは良く解らない。経済学者がビジネスをやったことがないし、それにそもそも裕福ではないからだ。経済学の本は世の中に利益を与えたことなど殆どないが、世の中に損害を与えた事例の方が遥かに多い。
会社員が本を書いても、それほど価値はないのだ。というのは、会社員はその会社の全ての役職を経験したのではなく、ごく一部の役職をしか経験していないからだ。このため会社を大局的から見て物を考えるということができないのだ。飽くまでも会社員としての心構えや技術を学ぶ程度のことしかできないのだ。
会社の社長といっても、自分の父親が社長であったために、それを引き継いで就任したり、サラリーマン社長とかでは、そういった者たちが書いた本はそれほど価値がない。その会社で一番偉いのは創業者なのであって、それ以降に就任した社長たちというのは創業者の遺産で食っている連中なのである。
やはり起業家なのだ。起業家だからこそビジネスの真髄をズバリ言い当てることができるのである。ビジネス書では技術的な本が多いのだが、確かにその手の本は仕事ですぐに役立つものなのではあるが、ビジネス書では起業家の書いた本を筆頭に置くようにすることだ。起業家の考え方が解れば、ビジネスは巧く行くものなのである。
●起業の五つの秘訣
今回紹介する本はこの本!
『ライク・ア・ヴァージン』(日経BP社)
リチャード・ブランソン著
土方奈美訳
リチャード・ブランソンはヴァージングループの創業者である。リチャードは貧家の出ではない。祖父は高等法院の裁判官で枢密院顧問官であり、父親は法務弁護士であり、母親は元スチュワーデスである。17歳の時にパブリックスクールを中退し、それ以降、起業家としての人生を歩み始める。彼が成功したのは彼の努力もあるが、資産家と結婚した叔母が経済支援をし続けてくれたこともその要因である。
リチャードは貧乏から身を起こした起業家ではないが、良家のお坊ちゃんだからこそ泥臭い部分がなく、その考えは非常にスマートである。俺は彼の本を読んで彼の意見に全て納得できたくらいである。リチャードは起業には五つの秘訣があると指摘する。
①楽しくなければやるな
これは本当にその通りで、起業する場合、それが楽しいからこそやるのである。お金が儲かるとか不純な動機で遣り始めてしまうと、起業なんて成功しないものなのである。自分が起業を計画して、「このビジネスは面白くないな」と思ったのなら、起業を取りやめた方がいいのだ。
②革新的であれ
起業する際、革新的な何かを打ち出さない限り、成功することはできない。他の会社と同じ事をやるのではなく、他と違う何かを見つけ出し、それを徹底的に伸ばして行かなければならないのだ。既存のビジネスは既存の会社に任すべきであって、敢えて起業家が手を出すべきではないのだ。
③愛社精神が奇跡を呼ぶ
国家にとって愛国心が必要なように、会社には愛社精神が必要なのである。社員たちが愛社精神を持てば奇跡が起こるものなのである。社長が社員たちを見下したり、社員たちが会社の悪口を言うことを許してはならないのだ。ベンチャー企業では規模が巨大化するまで家族的でいられるので、徹底的に家族的に接して、愛社精神を養って行くべきなのである。
④経営とは話を聞くこと
起業家はあれこれ命令を下さざるを得ない。しかし起業家が会社の全てを把握することは不可能なのである。だから社員たちから話を聞いて、会社を経営していくようにしなければならないのだ。リチャードの話には非常に説得力があるのだが、それは彼が良く他人の話を聞いているからに他ならないのだ。
⑤身近な存在であれ
起業家の中にはゴルフや夜遊びに夢中になったり、マスコミに出まくって人気を取ろうとする者がいるのだが、そういうことは起業家として不要だし、会社の経営に於いては非常に危険なことなのである。起業家は社員たちやお客様たちと接するのが仕事なのであって、身近な存在で居続けなければならないのだ。
●起業時の最大の不安
起業時の最大の不安は「起業するだけの勇気がない」ということなのである。リチャードみたいにパブリックスクールを中退した者ならその勇気があるのだが、下手に高校や大学を卒業した者だとその勇気がないのである。だからいつまで経っても起業しないのだ。
起業するか悩んでいる時、起業できない理由をあれこれと思いついてしまうものだが、起業を諦めてしまう理由は幾らでも考えつくものなのである。しかしその理由を以て起業をやめたからといって、なんの変化も起こらないのだ。「起業はやったもん勝ち」であって、とにかく勇気を出してやってしまった方がいいのだ。
但し気をつけるべきは、起業した際の事業を確実に成功させなければならないということだ。起業したのに、その事業が巧く行かなかったら、新しい事業の殆どは成功していないのだ。だから行き成り大きな事業に手を出すのではなく、まずは小さな事業に手を出して、経験値を積んでから大きな事業に手を出すようにすべきなのである。
起業して失敗したとしても別に構わない。「素晴らしい教訓は大抵失敗から生まれる」ものだから、その失敗が貴重な教訓となるのだ。起業家たちの中には一発で成功させてしまう者もいれば、何度も倒産させてやっとのことで成功する者もいるのである。
リチャードは言う。「勇敢な者でも永遠に生き続けることはない。しかし臆病者は生きることすら叶わない」と。臆病になってしまうと、安全のように見えて、実はいずれジリ貧になってしまい、破滅していくものなのである。若い時は勇者になるべきなのであって、勇気を出して起業してしまった方が良いのである。
●会社の財産は人材だけである!
会社は資本金がなければ成り立たないのだが、リチャードは「会社の財産は人材だけである」と主張する。「優れた人材は事業に大切というだけではない。人材は事業そのものだ」と、人材と事業の因果関係が普通の会社では逆になっていることを指摘するのである。
起業家は独裁で会社経営をしていくので、社員たちは命令を実行すればいいと思ってしまう。こうなると社員たちは表面上服従するが、内面ではどう考えているか解らないのだ。そのため社内の不満が溜まりに溜まって、或る日突然に大爆発を起こしてしまい、社長が解任されてしまったりするのだ。
会社を大きく発展させていくためには権限の委譲が絶対に欠かせないのだが、起業家が社内で人材を育成していないと、権限を委譲できるだけの人材が社内にはいなくなってしまうのである。このためいつまで経っても起業家が全権を握り続け、会社を大きくして行くことができないのである。
ではどうやって人材を育てて行くかというと、それは社員を「社内起業家」として育てて行くのである。社員が新しい事業を提案し、その新規事業が巧く行ったら分社化してしまい、それでヴァージングループは勢力を拡大していったのである。
俺はリチャードの意見を聞いた時、松下幸之助の「物作りの前に人作り」という言葉を思い出した。社内起業家ではリクルートのことを思い出した。成功する会社というのは、やっていることは大体似たようなものなのであって、どうすれば人材を育てることができるのか考え、それを実行しているのである。
●社員が会社を辞める理由
会社が人材を確保するためには、とにかく社員たちを辞めさせないようにすることだ。人材の育成には時間がかかるものなのである。社員たちが何かあればすぐに辞めてしまうような会社では人材育成ができないのは当たり前のことなのである。
リチャードは「人が会社を辞める主な原因は自分の意見を聞いて貰えないこと」だと喝破する。お金だけが理由であることは少ない。自分が何かしらの意見を持っているのに、それを会社が聞き入れてくれないからこそ、怒りを爆発させて辞めてしまうのである。
だからリチャードは社員たちの意見を聞くのである。これは何も彼の人柄がいいということではないのだ。ヴァージングループでは発展していく過程に於いて、かなりの社員たちが辞めていったのであり、リチャードはそれを克服するために社員の話を聞くことの重要性に気付いたからこそ、こういうことをやっているのだ。
組織はどうしても「上意下達」にならざるを得ない。このためトップは「部下たちは自分の命令を忠実に実行すればいい」と勘違いしてしまう。確かに命令は忠実に実行されなければならない。しかし部下たちがその命令を受けて何を思っているかは、部下たちから直接に話を聞かないと解らないのだ。
上意下達の危険性が解っていないと、社員たちは簡単に辞めていってしまうし、それどころか残った者たちは社長に激しい恨みを抱いて、いずれクーデターを起こしてくるものなのである。時折発生する会社のお家騒動は、社長が社員たちの意見を聞いてこなかったことにこそ、その原因があるのだ。
●常にノートを持ち歩く
会社経営とは改善の連続である。改善をすればするほど会社の経営は良くなっていく。社長が改善を怠っていると、問題は累積し始め、会社としてはその社長を解任し、新たな社長による変革によって事態を乗り切らなければならなくなってしまうのだ。
リチャードは会社を日々改善していくために、常にノートを持ち歩き、何か気になったことはすぐに書き留めて行くという習慣を持っているのだ。このノートは特殊なノートではなく、文房具店で売っている在り来たりの物である。このノートを溜め込めば溜め込むほど、ヴァージングループは改善がなされて行くのである。
社長たちの中にはメモを取る習慣を持たない人たちが非常に多い。そういう面倒臭いことを嫌ってしまうのだ。しかしそのツケが会社経営の停滞であり、社長が改善をしていないからこそ、部下たちが一生懸命に仕事をしても、会社の業績が良くならないのだ。
ノートを持ち歩き、常にメモをしていると、自分のやるべきことが明確になるものなのである。情報を聞き流していては解らないものであっても、自分がせっせとメモを取っていけば、今、自分は何を重要視しているのかが、非常に良く解るようになるのだ。
社長が会社のトップとして最大の権限が与えられている以上、どうでもいい仕事をやろうと思えば、幾らでもできるものなのである。しかしそんなことをやっていては会社の経営は絶対に巧く行かないのだ。何が重要で何が不要かが解った上で会社を経営するからこそ、会社の業績を上げて行くことができるようになるのである。
●最高の秘訣
リチャードはお金が欲しいからということで会社を経営しているのではない。
「みんなが楽しい時間を過ごして貰う方法を見つけたい」
ということで会社を経営しているのである。会社はそのための道具なのであって、この道具を使ってどうお客様を楽しませてあげとうかと日々考えているのである。
会社経営に於いて利益の追求は絶対に会社の目的にはならない。これは会社を経営すればすぐに解ることになのに、学校や大学で「会社は利潤追求を目的とする」と言う間違ったことを教えられてしまうからこそ、その間違った考えのまま会社経営を続けてしまうのである。
会社はお客様たちを楽しませることができれば、幾らでも利益が発生してくるものなのである。利益は結果として獲得できるものであって、その利益を目指して何かをやった訳ではないのだ。だからこの会社経営の真実に気付いた者はどのような職種であったとしても、会社経営を成功させてしまうのである。
人間の脳は人生を楽しめばより高い能力を発揮できるようになっている。それなのに全ての人たちは学校で苦しむことを教えられてしまうのだ。学校の教師たちは勉強と称して生徒たちを苦しませ、スポーツと称して生徒たちを苦しませるのだ。このためこの世で生きるためには苦しまなければならないと洗脳された人たちが大量に出て来てしまうのである。
日本の学校がダメで、外国の学校が良いなどということは有り得ない。学校というものはどうしてもそういうことをしてしまうのだ。リチャードがイギリスのパブリックスクールの中退者であることを絶対に忘れてはならない。学校で洗脳されなかったからこそ、起業家になり、ヴァージングループというイギリスを代表する起業グループを作ってしまったのである。
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